夢の舟唄

備忘録にしたいと思っています

南国は遥か遠く

※小説「終戦のローレライ」のネタバレを多分に含みますので、未読の方はブラウザバックをおすすめします。

 

前回に引き続き、福井晴敏著「終戦のローレライ」の話です。前回はギリギリ人の形を保ってましたが今回はちょっとマリアナ海溝の澱みみたいになってるかもしれません。

そう、退場が早すぎる推しの話をします。

 

推しが登場するシーンは1巻……のまあまあ後半です。そしてこの巻で亡くなります。亡くなったと思われます。(後述の事情により直接の描写がない)

ローレライ履修済の皆様、覚えていらっしゃいますでしょうか。「仲田大尉」という人物を。

彼は重要か重要でないかと言ったらかなり重要な人物だと思います。だって彼の行動がなければ(他の誰かが代わっていたかもしれませんが)伊507と征人の冒険譚は始まらなかったのです。始まらなかったと思わせてください……。

と、言うのも、ローレライ巻頭の主要人物紹介欄に仲田大尉の名前は載っていないのです。ついでに言えばフルネームは明らかになっていません。推しのフルネームが呼べない!!つらい!!!!オタクたるもの推しをフルネームで呼びたい!!(?)

今後フルネームも明らかになると思ったのです。田口掌砲長とコンビで大活躍してくれると思っていたのです。彼の初登場時は。

征人と清永を迎えに来たトラックに乗っていた集団の一人で、不安と緊張で固くなる2人に声を掛け、甘いチョコレートの塊を渡す、優しくて頼れる兄のような男。年は40代。(のように見えるらしいので多分40代)

ちなみにこのチョコレート、読み返したところ、飴羊羹より二回りくらい大きい小石のようなチョコレートとのこと。……かなりでかいな??

えっなんかめちゃくちゃ好きそうなキャラクター出てきた……ってちょっとルンルンしちゃいました。読むスピードも上がった。

容姿は痩せているが骨太な印象で、頬が骨ばっている。大尉で砲術長。

それから?私この人の情報もっと知りたい!(もうない)

何で当時としては貴重なでかいチョコレート何個も持ち歩いてるの??(不明)

こんなに情報が少ないキャラクター推すのは初めてですね!グリッ……ンのサムライ・キャ……だってもっと情報開示されてた……てた……?てたよ!

と、この情報が開示されてからすぐ退場するんですが。

またこの……退場までの過程が……しんどいですね……。伊507乗組員を乗せた浚渫船を襲うコルセアに対して、一人浚渫船に残り機銃を撃ち続ける。孤軍奮闘する仲田を乗り移った伊507の上から見つめる田口と木崎、そして征人。あっ……しんどい……。

そして3人に気付き、一瞬の挙手敬礼と返礼に対する笑顔。ウワァァァァァ(私が爆発する音)この一瞬に仲田大尉という人間の人生が詰まっている……。

機銃を撃ち続ける仲田を援護しようとしてフリッツに制止させられたところで仲田自体の描写はなくなり、浚渫船の状況が描写されていくんですが、これがまた……。

浚渫船を打ちのめす機銃の雨。燃え上がる船体。な、なにもそこまでしなくてもいいじゃないですか……。

征人が艦内に入ると、浚渫船を見ている人は誰もいなくなり、艦橋に響く『重い鐘の音に似た衝撃音』が外の状況を知らせる。潜望鏡を覗く男の「轟沈した」の一言。「大尉の犠牲を無駄にするところだった」という掌砲長の怒り。

推しが死んだ……。

もうここから2巻を読み始めるまですごく時間を要しました。推しの死がつらい!!つらすぎて、浚渫船の轟沈は確定だけど仲田が死んだのは誰も確認してなくない??ひょっとしてひょっとしたら彼が生きてる可能性は捨てきれないのでは!?とか考えたりしたものです。でもその後のあれこれを考えると浚渫船と一緒に沈むのが1番穏便かもしれない。もし彼ではない誰かが浚渫船に残ったとして、彼が砲術長として伊507に乗り組んだとして、私は3巻の衝撃に耐えられただろうか……?と思うと、あのタイミングで推しを亡くしてよかった気がしてくるのです……。

だって彼はまあ確実に浅倉良橘の派閥の人間じゃないですか……。征人に「死ぬんじゃないぞ」と言った声で、肩を叩いた手で伊507乗組員に銃口を突きつける姿なんて耐えられますか……いや、耐えられない。少なくとも私は死ぬ。

でもー!でもコルセア戦で幌つけたまま機銃ぶっ放して「びっくり箱」やろうとした彼が!!海中で主砲発射っていう奇想天外作戦を嬉嬉として受ける話も読みたかったー!!

今回は以上です!